第97章 【番外編】マリーゴールド
「結婚なんて人生の墓場よ」
ゼミのOG会に誘われたので初めて参加した。
教授の挨拶が終ると、私のテーブルではそんな話が広がった。
「そ、そうなんですか…」
「そうよ、幸せな生活なんてしてるのはほんの一部の勝ち組だけよ」
これは…先行きが不安になることを突然言われるとは思いもせず、動揺してしまう。
「家のことは任せきり、たまの休みは家にいるくせになにもしなくて邪魔でしかないし、私の自由なんて消えたわ」
「……はぁ……」
流されるがままに相槌を打つ。
先輩はくっと赤ワインを飲み干すとヒートアップした。
「なのに!いつも勝手に遊びに行って…ずるいと思わない!?
でも私がこういうのに参加したいって言うとやれ晩御飯はどうしたらいいか何がどこにあるかわからないだ……何よ…!!」
「……なるほど……」
ちらっと辺りを見渡すと、頷いているのは薬指に石が光っている人達ばかり。
「あなたも結婚してるの?」
「あ、まだ籍は入れてないのですが…」
突然大迫力で迫られ、思わず肩が跳ねる。
「今日だってどれだけ出掛けるまで私が気を遣ったか…!」
朝から家事や夕食の作りおきの話や、すぐ使うものを見えるところに並べたという話をひたすら聞かされた。
「あなたならどうする?」
「後日埋め合わせしようって次の予定立てながらスキンシップ…ですね……」
「結婚と恋人ごっこは違うのよ。
覚悟したほうがいいわよ」
「は、はい…」
とても先行きが不安になる飲み会だったことだけは間違いなかった。