第96章 【番外編】なんて嫉妬深い王子様
「ま、待って…!!」
後ろから腰に手を回し、重たいドレスに引っ張られそうになりながら、それでも負けないように引き寄せる。
煙たいいつものにおいが、どこか遠く感じる。
「あの…」
なんて言葉を掛けたらいいかわからなくて、そこでやっと涙が伝った。
「っ!」
すぐ近くの空き教室に引き摺られ、戸を閉められる。
冬が近いせいか、まだ夕方なのに随分暗い。
「…っ!?」
すぐに唇を彼のそれで塞がれ、心臓が止まったように思った。
「…ふ、ぅ…」
悲しそうなそれを拒めない。
息の限界まで答えて、やっと解放される頃にはもう膝に力が入らなかった。
「……ぁ…」
「クソ…」
小さく呟いたそれが、どうにも、嬉しくて。
背中がぞわりと熱くなる感覚を覚えた。
きっと随分はしたないヒロインだと思われたと思う。
ドレスを翻しながら、その胸に飛び込み、少し乾燥した手のひらを、熱くなった肌に誘導した。