第96章 【番外編】なんて嫉妬深い王子様
文化祭当日は、繋心さんとはほとんど会えなかった。
というのも、部活の出店もだけれど、他のクラスにも品物を卸していたらしく、校内中を忙しそうに回っている。
時間が出来たら一緒に回りたい、という話もしてたけれど、あまり一緒にいるところを見られるのもまずいし……。
(今年も一人だなぁ…)
と落ち葉を箒で集めていた。
(これが終わったら用具不足の確認を各クラスに聞きに行って、それから……)
と仕事の再確認をした。
私は実行委員でもなんでもないのだけれど、またしてもクラスの女の子に押しきられてしまった。
最後の文化祭、彼氏と回りたいのもわかる。
私と違って、同じ学年同士だし、仕方ない。
さて、と用具を片付けたところで、文芸部の部長さんが顔を真っ青にして走って現れた。
「るるさん!大変!!
演劇のヒロイン役が怪我をしちゃって…!!」
「え!?」
どうやら最後のリハーサルで、舞台から降りて走るところで、衣装の布が引っ掛かっての捻挫らしかった。
足首は痛そうに真っ赤に腫れている。
「るるさん、台詞、覚えてるよね?」
「……………!?」
「お願い!!!」
「え!!いや、私なんて、そんな、素人同然…」
「他に頼める人がいないんだ…頼む!!!」
「えええ……!?」
人前に立つことすらなかったというのに、突然の申し出を断るすべもなく、成り行きで私はそれを引き受けることとなってしまう。