• テキストサイズ

迷い道クレシェンド【HQ】【裏】

第93章 【番外編】大掃除


「じゃあ、これ……」
るるさんは凄く渡しづらそうに紙袋を見せた。
「あ、ありがと……」
自分も贈り物を用意していた。
鞄から出そうとしたところで、るるさんは渡した物についてゆっくり、説明した。
「それね、私の友達からなんだ。
その、一回でいいから会いたいって…」
「……」
俺は今、どんな表情をしているだろう。
悲しんでないか。
辛そうにしてないか。
そんなことで頭がいっぱいになる。
何もるるさんが渡さなくても。
「私も……菅原くんの気持ち知ってるから、断ったし、自分でってお願いしたんだけど、押しきられちゃって……。
そこは、ごめんなさい」
「あ、いや、そんな……」
「菅原くん、優しいから…」
「ええっと……」

なんて返したらいいかわからなくなり、コーヒーを一口飲む。
嫌だとか、困るとか、そういう言葉しか出てきそうにない。
きっと、るるさんを凄く困らせる。
「でも、俺も、進まなきゃいけないから。
その切っ掛けになるかもしれないんだろ?」
「ご、ごめんね……!」
彼女の涙ぐんだ瞳には本当に弱い。

困らせたくないけど、困らせたい。

せめて、最後だけ、一矢報いを。

「でも、俺が優しいのは、るるさんにだけだから」
「…っ!!!?」
いつもの余裕の表情がぐらりと揺れる。
驚いて、赤くなって、はっとする。
「これはこっちでなんとかする。
期待はしてないと思うけど、まあそういうこと」
「う、うん」
だから、最後は、自分の気持ちをもう一度言葉にした。
もしかしたら、次会うときは、この気持ちがなくなってるかもしれないから。

「もう少し、君に片想いしていたい」
「………は、はい」

泣きそうな顔で、小さな震える声でそう返事してくれた。
君はきっと、誰よりも優しい。
/ 708ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp