第92章 【番外編】終着点
やっと桜が満開になる頃、毎年の個人的な最大のイベントがやってくる。
今年は雑誌も読みふけ、入念にリサーチした。
気軽に入れて、お洒落で美味しいお店らしく、私も楽しみだった。
「繋心さん、お誕生日おめでとうございます…」
うっとりとシャンパングラスを鳴らしながら、最大限に愛しい人へお祝いを捧げる。
「普通、こういうのは男がやるだろ……」
「ごめんなさい、なかなかいいプレゼントが見つからなくて…。
ご馳走させてください」
「別にもう祝って喜べる年じゃねえよ」
「私が何かしたいんです!」
こうして出逢えたことへの喜びは、やはりこの世に生を受けてくれたことから始まる。
私は本当に、世界で一番この日に感謝している。
「親にもなんかやったんだろ…?
大丈夫かよ?」
「とびきりの、というわけにはいかなかったので、ささやかな旅行と少しだけサプライズを…。
でも、これからお世話になるかもしれないので、その…あと、やっぱり、嬉しくて…」
「……かもじゃねえだろ」
遠慮して言ってしまったことにすぐに気付かれてしまった。
料理を食べる手が止まる。
「無理やり実家になったのは、悪かった。
お前の気持ちを無視した結果になった。
やっぱ、嫌か?」
「……っ」
「ここしばらく変だぞ、るる。
切るなら潔く、そうしてくれ。
こっちは、そのつもりはねえ」
「違うんです、私、わからないんです」
「なにが」
「かぞく」
繋心さんは、真剣な表情のまま、私の言葉を待ってくれた。
「小さい頃の環境とかあってないような物だったし、自信ないんです。
どうしたら家族で、繋がりがあって、安心感があって、そういう場所に出来るのか。
結果だけを見てきて過程を見ていません。
私、ちゃんと、作る自信がないんです…!」
ずっとここ最近思っていたことをやっと言えた。
これで嫌われるならそれでいい。
こんな女と結婚なんて、不安に決まっている。
寂しいし、また1人になっちゃうけど、私は最初からそうだった。
「バカか」
「…………ば!?」