第91章 【番外編】浸食
今まではそう思っていた。
怖いのと、訳のわからないどろどろとした何かに追われるような。
嫌悪感は幼少期のせいでよくわからない。
本能がどこか嫌がってるのは、なんとなくわかった。
ソレは日常的によくあるものだと思い込んでいた。
だから恋愛ドラマに共感なんてしたことないし、他人のそういう話にいまいちピンと来なかったり、そんな私だった。
手を繋がれるだけで、頭がぼんやりするとか。
キスするのがドキドキすることとか。
目が合わせられないくらい恥ずかしい、とか。
本当に知らなかった。
自分じゃないくらいに、目の前の人に期待してしまっている。
最初はいつもみたいに、相手のツボや好みをどこか探ってしまっていた。
例えば、相手を触るにしてもタイミングや場所があって、いつどこなら満足してくれるかとか。
でも段々、そんな余裕なんてなくなって。
逆に不意をつかれていって。