第86章 【番外編】優しくして
安物のスーツを脱がされ、ブラウスのボタンをゆっくりと外される。
熱いお風呂に入りたいと思っていたのに、官能的な仕草に揺らぐ。
優しさに溢れた慰めに、ただ流されていく。
スカートを剥がされ、薄く肌にかかる黒いストッキングに手がかけられる。
内腿あたりに伝線しているのを見つけた。
擦れてしまいがちな爪先とそこは、よく買い換える原因になっていたと一週間通して思う。
びりっと音を立てて、割かれる。
「あっ、高いのに…」
「もういらねえだろ」
「…そ、ですけど…」
なんとなくもう使わないものでも、乱雑にされるのが憚れる値段だったので、つい文句を言ってしまった。
繋心さんの爪跡にそって穴が空いていくそれに、妙な気持ちになる。
「無理やりみてえで、これはこれでいいな…」
「っ、変態…っ」
「お前も楽しんでるクセに」
衣擦れとはまた違う音。
やがて露になった下着をずらされ、身体の中心が空気に晒される。
「溢れてる」
「言っちゃ、やだ…っ!」
お腹がじくじくと疼き、芯から熱が溢れてくるのを止められない。
生暖かく、ざらりとした物が這わされ、身震いするほどに押し寄せる波に抗うことが出来ない。