第86章 【番外編】優しくして
後日、堅苦しいスーツを身にまとい、ひととおり教わり、それを真似してやってるはずなのに、上手くいかず、落ち込んで帰ることの繰り返し。
何度聞いても怒られ、息の詰まるような一週間は漸く終わりを迎えた。
解放された喜びで、玄関で思わず涙が溢れた。
「おい、どうした…?」
先に帰ってきていた繋心さんに驚かれ、慌ててリビングに連れられて、冷蔵庫からお茶を用意してくれる。
「社会って、理不尽だなって……」
はあ、とため息がこぼれた。
みんな、毎日こんなことしてるのかと。
私には耐えられそうになかった。
「お前、結構な修羅場を毎回くぐってるのに、そういうのはダメなんだな」
「……それは、誰かさんがいつも助けてくれるから」