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迷い道クレシェンド【HQ】【裏】

第86章 【番外編】優しくして


進路指導で就職先(?)が決まっていることを報告した。
結婚ありきのそれだ。
何がどうしてその考えに至るのかわからないが、男の先生に強かに怒られた。
「女だからって結婚だなんだで社会を知らないままなのは昔の話だ!」
「……はあ……」
「大人としての務めを果たせ。
インターンぐらいは参加しろ」
「………え?」
ごりごりと資料を押し付けられ、重い書類を鞄に詰めて持ち帰る羽目になった。

そのあとも散々文句を言われ、やれ大学に出した親の金だの、親孝行しろだの、年金問題の話までも持ち出され、散々な言われようだった。
「進路で結婚っておかしいですかね?」
と思わず愚痴を言ってしまった。
「おかしくねえけど、向こうも事情あんだろ。
就職率引き上げねえといけねえし、紹介云々のこともあるだろうし。
知らねえけど」
「……ああ、そういう…、めんどくさいんですね結構…」
はあ、とため息が出てしまう。
まさかのそっちの都合で人生否定されるとは思わなんだ。
「とりあえず、顔持たせる為にも一ヶ所くらい適当にやっときゃあいいんじゃねえか?」
「内定決まっちゃったら?」
「働くのはお前の自由だ。
蹴ってもいい。
店は今んとこ回ってる」
「……んー」
しばらく考える。
私が普通の仕事でやっていけるのだろうか。
頭がいいわけじゃない。
徹さんみたいに機転は利かないし、常識も人よりない。
集団にも慣れていないし、相変わらず他人との距離は苦手だ。
「やっていけるのかな……」
心配で思考がそこで止まった。
「やっていけなかったら、ウチでいいんじゃね?」
「…そっか…」
気軽に考えてくれる人がすぐに近くにいてよかった。
そういう安心感があった。
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