第83章 【番外編】優越
「す、すいません!」
と謝りながら慌てて身体を離そうとした。
「きゃっ!」
と小さな悲鳴が聞こえる。
虫でもいたかと驚きながら棚を見ようとしたが、特にその気配はない。
結局離れないでいたままだったので、そのままの体勢で何に驚いたか聞く。
「どうしましたー?」
「…っ、ご、ごめんね…、耳とか首とか、弱くて……」
恥ずかしそうに赤い顔で振り返りながらそう言う。
あ、これ、ダメなやつ。
と自覚するには遅すぎて。
改めて棚に手を付いて、先輩の逃げ道を塞いでしまう。
ダメだとどこか思ってても、それとは別の何かが、その香りをまた求める。
すう、と息を耳元で吸うと、きゅっと肩が竦められる。
後ろから見える浮き出た鎖骨。
なんとなく、高揚する。
ふっと息を吹き掛け、さらさらとした髪を揺らす。
「ひぁっ…!」
声と共にまた肩が跳ねる。
肺に残る、甘い香り。
もしかして、煙草とかそういうのって、こういう感じなんだろうか。
「先輩……」
「んっんぅっ…!」
「いつも、コーチにこういう声、聞かせてるんですか」
「ああっ!ん、ち、違う…っ」
「じゃあ、どんな…?」
囁くように含んで言っているだけなのに、るる先輩は面白いくらいに反応してくれる。
ひくひくと身体を揺らし、膝から崩れそうになり、それを支えるように腰に腕を回す。
「んぁあ…っ!だ、だめだから…っ!」