第80章 アップルアンドシナモン終
もう夜も遅く、酒も抜けた頃、なかなかイケる口だと聞いて飲み交わす。
当時の試合の話にもなり、盛り上がってしまった。
「ふ、二人とも、そろそろ……」
とるるが何度か止めに入ったが、尚も気にせずいた。
「監督!!るるをくださいっ!!!」
「ぜってぇやらねえ!!」
「これ一気出来たらマジで考えてください!!!」
「やれるもんならやってみろぉっ!!」
「私、そんな軽いですか!?」
向こうもこっちも冗談を言い合いながら、その瓶の残りわずかな液体を競い合い、いい年して久々にゲラゲラと笑った一晩だった。
「もう…、私置いてけぼりでした……」
木兎がダウンして寝静まった頃に、るるが切なそうに呟いた。
「久々に盛り上がったな」
「もう……」
「まあいいじゃねえか、たまには」
本日の最後の一本に火を付け、細い肩を抱く。
「なんとなく、お前がアイツ好きなのわかる」
「……っ」
気まずそうに口許を歪ませ、俺の腕から脱出し、申し訳なさそうに顔を見る。
「……私、その…」
「許せる程お人好しじゃねえけど、俺も悪かった訳だし」
「……そんなこと、ないです」
その時の悔いは色々ある。
もっとこうしてやればよかった、とか。
それは向こうも一緒で、罪悪感に今にも押し潰されそうで、目に涙が溜まっていた。
「その、ずっと前から、決めていましたから……」
「ならそれでいい」
火を消しながら、真正面に座ったるるに口付ける。
「あ…、起きちゃう…」
「たまにはいいだろ、こういうのも」
「…っ、ひどい…、断れないの知ってて……」
「断ったらそん時の話、根掘り葉掘り聞き出してやる」
「もっとひどいっ!」