第78章 【番外編】誰にでもある願望
なんていうやり取りをしたのは、いつだったか。
多忙で忘れていた頃、るるが一人で体育館に来た。
今日この後何か約束をしていたか?と考えたが思い当たる節もない。
個人の指導をし、解散の挨拶をしたところで、るるに向かった。
「どした?」
周りがざわつくのが面倒で、集まって騒ぐやつらに一喝入れて散らした。
蜘蛛の子のように別れていくのを呆れて眺める。
「…るる?」
「繋心さん……」
急に熱っぽい視線を向けられ、涙ぐんだ声で名を呼ばれる。
どきっとしつつ、今度は何か喧嘩したかを考える。
思い当たることがまたしても浮かばない。
「も、我慢できません……」
(ヤバ……)
そこまで怒らせることをしてたか?
珍しくブチ切れられるのかと覚悟を決め、周りのギャラリーにそわそわされる。
「し、したいです……」
それはもう、静かな声だった。
周りがざわついてたお陰で辛うじて消えていた声だと思う。
むしろ消えててくれと切に願うしかない。
「落ち着いて、るるさん。
ここがっこ……」
「私、ずっと我慢しました…!お願いします…!
知らない人にも付いてってません!
お菓子くれる人にも付いてってません!」
「お、おう、頑張ったな……」
「幼稚園児かよ…」
(全くもって……)
「もう、大人なので……してください…っ!」
静まりかえった体育館に、その声はばっちりと響いてしまった。
もうつっこむ気力すらない。
しばらくこの話は部活で持ちきりになるだろう。
思春期とは……そんなものだ。
「やってあげてくださいよ」
「るる先輩、いいーぞー!かわいいぞー!」
「そういうプレイですね!見せつけてくぅるぅ!」
「うるっせえ!!お前らの言葉の語尾に大量の『w』が見え透いてらぁあ!!!!!」
「す、すいません」
「や、実際草生えまくりでしょ」