第73章 【番外編】夏の夜の夢4
「うーん……なんですかぁ…?」
るるが目を擦りながら起き上がった。
タオルにくるまれ、この状況をさっぱり理解していないらしい。
さて、どこから言おうか一瞬考えた、が、そのままのリアクションを楽しもうと目の前に腰かけた。
「はよー」
「お!……ぉ、は……っ」
一瞬顔を輝かせ、そして冷静になり、顔を青くしていく様子がたった1秒で楽しめた。
コマ送りにできたらさぞ面白かっただろう。
「え!?な、なんで…」
そりゃそうだ、朝方二泊三日で出掛ける予定だった人が今この場にいる。
るる本人からしたら意味がわからないだろう。
それはこちらでもあるわけだが。
「洗いざらい吐きましょうか」
イヤミのように丁寧に言えば、ぎょっとした顔をし、彼女は辺りを見回してから考えた。
「お、怒ってます、よね?」
「まあな」
「なにもしてません、それは、信じて……ください……」
「まあな」
「……うぅ…」
今にも泣きそうな顔でるるが見てくる。
それはもう本当にどうしようもない時にしか見せない顔であり、本人の悪気が皆無なのも十二分にわかっている。
やれやれ、と頭を撫でてやり、ようやっと後ろの及川に口を開かせる時間を作ってやれた。
「るる、俺は帰るよ」
「…!」
(いるの、忘れてたか)
「だ!ダメ!この天気じゃ…」
「そうだ、道も土砂崩れで封鎖しまくってて帰れるもんも帰れねえ、諦めやがれ」
「……それで帰って来たわけか」
「そゆことだ、大人しくしてろ」