第72章 【番外編】夏の夜の夢3
奇妙な話で。
エアコンの下で、裸のるると寝てしまった。
頭に走った鈍痛で一回目が覚めてしまった。
「!!!?」
見知った白い肌が、視界に広がる。
真っ先に思ったことは
(ヤバい、殺される……)
だった。
何がどうしてこうなったか思い出そうとした。
水を張るだけと言って浴室に行った彼女が戻ってこなかった。
外の気温は30度、湿度もエグいが、やはり全身びしょ濡れでエアコンの下にいるのは些か寒かった。
タオルを借りたいと言いに浴室の前に行けば、中からシャワーの音が聞こえる。
「マジか……」
俺がいることも忘れて、のんきに彼女は身体を温めていた。
戻ってくるまでかかるだろう。
下着まで濡れていて気持ちが悪かったので、せめて脱いでいようと思った。
シャワーコックを捻る音が微かに部屋に響いたのを確認し、扉の外からタオルを貰おうと声を掛けたかったが、思ったよりも早くその戸は開いてしまった。
扉の角が、眉間にクリティカルヒット。
「うぐ!」
という情けない声をあげて、あっさりと俺は意識を手放したのだ。
一通り思い出して、あまりの情けなさにため息がでる。
乾いたタオルが何枚か俺には重ねてあるのに、るるは、巻いたタオル1枚でそのまますやすやと眠っている。
眩しいくらいの白に、赤い斑点がくっきりと浮かんでいる。
相変わらず、悔しいとも悲しいとも言えない思いが、鉛のように胸に積もっていく。
濡れた髪を指に絡め、そのあまりにも愛しかった存在を改めて恋しいと思った。
大分歪んだ片想いだった。
凄く、固執していた。