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迷い道クレシェンド【HQ】【裏】

第72章 【番外編】夏の夜の夢3


きっと嫌われてはいるのだろうが、こうして、また肌が触れ合えるなんて、思いもしなかった。
「帰ってこない…か」
一瞬だけ、やましい下心が顔を出す。
それでも、またあんな泣き顔を見るのは、もう耐えられそうにない。
最初から、こんな風に片想いできたらよかったのに。
後悔しても仕方がない。
きっとこれが最後のふれあいになるかもしれない。
冷えたフローリングから身体を引き寄せ、洗濯したばかりのタオルに埋もれる。
首筋からする懐かしい花の香りが堪らない。
朝にはどんなひどい天気でも帰ろう。
風の音が強くなり、窓ガラスがガタガタと音を鳴らした。
「ウチにいれば、こんなんどうってことないのに」
聞こえていないであろう文句を包み隠さず溢した。
戻ってきて欲しい気持ちは、確かにまだある。
きっと許されないだろう。
眠っているのであれば、という浅はかな考えだった。
抗えぬ引力の波に飲まれ、そっと珊瑚色の唇に口付けた。


刹那、立っていた存在に気付いた。
本来ここにいるはずがない人。
それは、オタガイサマだ。

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