第71章 【番外編】ショコラノスタルジー
さて、今日の寝床はどこにしようか、と知らない町を歩いた。
公園はそろそろ限界だろう。
いつもの心霊スポットの屋敷でもいい。
夏が終わるに連れ、来客も増えるが、少し音を立てればすぐに逃げてくれる。
身を隠すには、楽だ。
見えないオトモダチがたまに見えてしまう以外は。
食糧を買うお金はもうない。
公園で汲んだ水を飲むしかない。
ふう、と息を吐きながら歩くと、一つの商店を見つけた。
残念ながら目の前でお店を閉められてしまった。
「なんだこんな時間に、中学生か」
「あ、はい…」
気まずい中、話しかけられてしまった。
なんて言い訳しようか必死に頭で考える。
なるべく保護者を呼ばれない円滑でスムーズで無理のない言い訳を……。
「じゅ、塾の、帰りで……」
「この辺にんなもんねーよ」
「…っ!」
「なんかワケありだろ?親と喧嘩かなんかか」
ふわりと煙草のにおいがする。
彼は一本吸い終わると、道路で適当に火を消してから、近くのゴミ箱に吸い殻を投げた。
「内緒にしといてやるよ、補導とかもめんどくせえし」
「ありがとう、ございます…!」
「やるよ、腹減ったら食え」
そう言うと、エプロンからバラバラと四角いチョコを10個くらい出し、手渡してくれた。
「そういう季節限定モンの味はあんま売れねえんだ」
「そ、そうなんですか…?」
確かに、普段売っている物より大分イロモノな感じがあった。
こういう小さなお店で全種類も置けないだろう。
(安納芋…と、焼き栗?)
「食って元気出せよ。
んで大人になったら、ちゃんと謝れよ?」
じゃ、とヒラヒラと手を振りながら、帰っていくその人を見つめた。