第71章 【番外編】ショコラノスタルジー
私は、ここにいてはいけないと。
そう思って外に飛び出した。
なのに、見知らぬ風景に怯えることしかできず、そのまま消えてしまう勇気もなく。
この町に唯一聳える大きな建物の屋上へ行っては飛び込む勇気もないまま、脱いだ革靴を履いて、さてどうしようかと考えた。
おじさまの家に、帰っていいんだろうか。
ただひたすらにその言葉を頭で繰り返す。
そこは私の居場所ではない。
余所者で、侵入者で、邪魔者だ。
ましてやそこの息子とそういう関係になってしまった。
穢いと、きっと罵られるだろう。
はっきりと血縁者だとはわからないが、そこの家に入ってしまった以上は、抗えぬ兄妹としてのラインがくっきりと浮き立つ。
怖いとか、そんな言葉より、罪悪感が先に来る。
そうしてしまった私の責任がずっしりと肩にのしかかかった。