第69章 【番外編】夏の夜の夢

るるは幼い頃培った色々なテクはあれど、キスだけはいつまでも下手くそだと思った。
それがまたそそられるのだが。
送った唾液の飲み込むタイミングだとか、相変わらず口で酸素を取り込もうとしているところとか、集中しすぎて手が止まるところとか。
付き合いはじめから、何も変わらない。

「っ！まっ、ぁ…まって…」
「合わせろって」
「んん、…っむ、むりぃ」
「誘ってきたクセに…」
くくっと笑うと、恥ずかしそうに伏し目になる。
誘導してやるように口膣内を弄び、あまりにも敏感なその身体は果てを迎え入れる。
「あっ…！」
と甲高い声をあげ、ひくひくと柔らかい腹を揺らした。
何かに動かされるように真っ赤になった耳を食み、空いている手で着ている物を剥がしていく。
たぷんと音を立てそうな胸には目もくれず、一直線にその敏感な先端を摘まみ、連続して快楽に落ちるように意地悪く攻めるつもりでいた。
「きゃうっ！？」
彼女にとっては強い二つの刺激に、またしても喘ぎとは程遠い悲鳴が聞こえる。
「やだ…、やさしく、さわって……」
恥ずかしそうに甘えた声でそんな願いを囁かれる。
それは今しがた彼女の耳元にいた俺には、はっきり、そして淫靡に、聞こえる。
タオルケットをかけ直し、やわやわと白い肌に指を這わす。
卵でも触るかのように、慎重に。
それでも耳や喉元を優しく舐め、繋いだ手はよりいっそう力を強めた。
「…はぁ、あっ、ん、ふ…っ」

イヤだと言うように顔を反らし、そして彼女から舌同士を絡め始める。
肌を撫でているせいか、もどかしさで集中は出来ていないようだ。
やれやれ、とため息を吐いてから、下手くそなキスをまた受け入れた。
ただし、逝かせないように、慎重にまどろっこしく。