第69章 【番外編】夏の夜の夢
最後の夜を惜しむように、彼女の柔らかな身体が相変わらず誘ってくる。
外の物音が不安で眠れないらしい。
最初に言った言葉は、
「手、繋いでていいですか…?」
だった。
あまりにも健気で、イヤだなんて誰が断れようか。
小さく冷たい手がきゅっと握ってくる。
嬉しそうに顔を見上げ、少し照れたように笑った。
誘われるかのように身体を寄せ、空いた手で髪に触れる。
「明日…早いですよね…」
それが断り文句なら、なんて意味のないものだろう。
わざわざ気遣って言われたものを無視し、唇をそっと重ねる。
「ん…」
「誘うなら、ちゃんと最後まで誘えよ…」
中途半端に熱を持った身体をもて余して眠れないくらいなら、朝まで堪能しようと。
多少の寝不足なら最早慣れてすらいる。
それでも彼女のことだから、遠慮してしまうだろうと、油断した。
ちゅ、ちゅ、と音を立てて啄まれ、触れ返すようにパサついた髪を弄る。
「……」
「……ダメ?」
「…口」
もう既にとろんとした顔をして、こっちの視覚は大分刺激を受けている。
一言そう言えば、入り口が開いて舌を受け入れてくれた。
外の滴の垂れる音に合わせ、ぴちゃぴちゃと小さな音が響く。
「ん、は…、ん」