第67章 【番外編】煙の奥のチョコミント
「影山くん…内緒だからね…!」
るるさんは、小さな肩掛け鞄を漁ると、3つくらい四角くて小さなチョコを手渡してきた。
季節限定のチョコミント味だ。
固さを保っているのを確認する。
鞄と荷物はきっと涼しいところにいたのだろう。
「……すぐバレると思うんすけど…」
「ええええ!?」
実際、前回は一瞬だった。
しかもこのチョコが口止め料なのもしっかり見抜かれていた。
「ど、どうしよ……」
「正直に言った方がいいんじゃないですか?」
別に怒られる訳ではないだろう。
何よりあの人は、るるさんには滅法甘い。
「……から……」
「は?」
あまりの小声に聞き返す。
「は、恥ずかしいからっ!!」
顔を真っ赤にして声を出した後、膝を抱えて踞り、その場から立ち止まった。
スローモーションがかかったように、その表情がかわるのを、流れる髪がふわっと宙を流れるのを、一コマずつ見た、気がした。
その様子はあまりにも綺麗で、思わず心臓がドクドクとする。
痛いほどだ。
何よりその、照れというか、恥ずかしそうなリアクションは、それを何倍にも魅力的に写す。
そんな幻想的な風景を見た後だというのに、彼女のそれを見て一瞬で現実に頭が引き戻される。
「血… !」
「ち?」
それはそうだ、猛暑の中、約一時間。
るるさんの身体は限界を訴えていただろう。
「わぁっ!」
「るるさん水飲んで!」
「わ、わっ」