第65章 【番外編】極夜
かなり適当な嘘を吐いて家を出たから、夕方帰る頃には心配されていた。
駅前のロータリーに迎えに来てくれていたことが嬉しくて、思わずキスする。
一人でいるのがツラかった。
「携帯はつながんねーし…」
「ごめんなさい」
「夕飯いるかすらわかんねーし」
「……ごめんなさい…」
「そんな怒ってねーよ、泣くな」
「……うん…」
本当は、全部、話してしまいたい。
でも、ぐっと我慢する。
唇をきゅっと噛み締めて。
その分、沢山甘えることにする。
「繋心さん、好きです」
「知ってる」
「あと少し、買い物していいですか?」
「ああ」
お気に入りの雑貨屋さんで、可愛い額と造花を見つけた。
あと、ガラスの小さなケース。
これで完璧だ、と思った。
最近食欲のある振りをしてしまったせいか、ホテルのビュッフェに連れていってもらった。
そんなに食べられない…のだけれど、悲しかったのを少しはまぎらわそうと、好きなものをたくさん食べた。
一緒にやったチョコフォンデュは、大失敗で、二人で大笑いしながらどろどろになったフルーツを食べた。
ちょっとロマンティックに、展望台で夜景を見て、久し振りのデートらしいデートにうっとりする。
ふかふかのソファに寄り添いながら、月が登っていくのをぼんやり眺めた。
「繋心さん…」
これだけは、どうしても言いたくなったから。
小さな声で、言ってみた。
「私達が、いつか結婚して、初めて出来る子は、きっとすごい可愛い男の子だと思うんです」
「なんだそれ」
笑われながら言われる。
「なんでしょうね…勘ですけどね…」
「女の子も、欲しいな…」
「……うん、楽しそう…」