第65章 【番外編】極夜
ほぼ何も食べないで2日、よろよろだ。
結局熱も出ず、検査も引っかからず、採血の検査待ちだった。
どこか炎症があればその結果でわかる、らしい。
恐らく胃炎だろうか、となんとなく勘繰る。
ネットで見た近い症状はそれだった。
燃えるように胃が熱く、原因のストレスや暴飲暴食には若干心当たりもあった。
が、結果は炎症はなし。
だけど、採血の数値が異常だとは言われた。
「これに近いものって、あとは…」
妊娠。
はたと気付いた。
帰りの車で手帳を開く。
来てない。
先月が最後。
「結果なんだって?」
「………ああー、えっと……ストレスですって」
「無理すんなよ」
なるべく、普通の受け答えをするけど、頭のなかは冷静じゃない。
「ちょっと、薬局、寄りたいです…」
我が儘を言って、少し引き返して貰った。
制服を隠すようにぐるぐるにストールを巻いて、一直線にそこに向かう。
紙袋に入れてもらい、そのまま投げるように鞄にしまう。
結果はやっぱり…という感想しかない。
言えば、きっと、……喜んでくれる。
それは、信じている。
でも、私は高校生だ。
狭い世間体の中で、彼がどれだけ悪く言われるか、容易に想像できた。
昔馴染みの町で、周りの環境もほとんど変わらない。
教え子がいて、その子たちにもその仕事にもきっと影響が出る。
私のせいで。
最悪、部活が出来なくなる…。
せっかくみんなあそこまで……。
そう思ったら、自分の残酷さに今度は怖くなってくる。
彼の為なら、なんて、簡単に思えてしまう。
身を隠して育てる?
どうやって?
仕事もしたことないのに?
アレで食い繋ぐ?
どうやって?
現実はなにもしなくても私の後ろを追い掛けてくる。
すぐに追い付いて、無理だ、と囁く。
わかってるけど、ツラい。
でも、決めた。
現状は、無理だから。
何をどう足掻いても、私にはどうしてあげることも出来ない。
みんなが納得して、みんなが幸せにならないといけない。
だから、今はダメだ。