第64章 【番外編】狭い小さな檻
「…ぁ……そんな、もう…?」
物足りなさそうな瞳がこちらを見上げてくる。
「外、だし…」
そっか、と残念そうにしながらも、しっかりと手は繋がれる。
されるがままに指を絡めると、にへーっと音がしそうなくらいに顔がふやけるのが見てとれる。
「絞まりがねーぞ」
「お迎え来てくれたのが嬉しくて…つい…。
来てくれるとは、思わなかったから…」
なんで、そんなことを言うんだろう。
ショックとかそんな言葉では片付かない。
ぽろりと本音が溢れる。
「信用、されてねえのか?」
「……!」
るるは、しまった、とでもいう顔をする。
そういう意味で言ったんじゃないのは、コイツの性格上は重々理解している。
いつも謙遜して一歩引いて、自分だけ我慢して、たまに立派な我が儘言うかと思えば、こっちの喜ぶことで。
どうせ親子水入らずでいて欲しい、とか、変な気を遣ったに決まってる。
ウチで只飯食うのに罪悪感を感じているようなヤツだから。
(……てことは…)
「どこに泊まってんだ?」
「…っ!え…?」
気まずそうな顔をする。
「わ、私の実家…ですが…」
「そんな少ない荷物で?」
「!!!」
離そうとする手に思いっきり力を入れる。
「どういうことですかねるるさん?」
「ご、ごめんなさい!!」
るるが泊まっていたのは、駅前のカプセルホテルだった。
確かに学校まではバスで一本。
すぐに、迎えに行くと連絡して及川邸に行けるのも納得がいく。
「でも、今回は、野宿してないですし!
ちゃんと鍵もかかるところですし!
エアコンもあるし!
ご、ご飯も…ファーストフードくらいなら……」