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迷い道クレシェンド【HQ】【裏】

第64章 【番外編】狭い小さな檻




「何が言いたいかわかるか?」
結局近くのホテルに移り、こんこんと説教をする。
ベッドの上で小さく縮こまったるるは、最早涙目だった。
「……はい」
「言ってみ」
「……ご心配おかけして、スミマセン…」
「次」
「遠慮して、ゴメンナサイ…」
「あとは」
「うえー!?まだあるんですか!?」
「ありまくりだ!!!」
細い肩を掴み、しっかり目を合わさせる。
「そりゃ、早く迎えに行かなかったのは…悪かった…。
俺もお前がウチに来んのがしんどいのかと思ってたし…」
「そ、そんな…!」
「あのな、毎回言ってるが、俺には文句だって駄々だって、我が儘だって言えよ。
一歩引かないで同じ距離でぶつかってくれよ……」
それだけで、自分の言いたいことの全部はなんとか伝わったようだ。
るるは静かに、ゆっくりと頷く。
「本当は、どうしたかったんだ?」
その言葉に他意はなかった。
ただ、彼女の本心が、欲求が、聞きたかった。
なのにぼろぼろと雨のように涙が溢れていく。
「一緒に、いたいんです…。
家が、暑くても…、ご飯作ったの食べてくれて、一緒にお風呂入ってくれて…、隣で寝てくれて…それだけで、よかった…っ!
でも、たまには、家族といたいのかな、って……、私には、ない気持ち、だから、わからないから…っ」

なんてことか。
そんなつもりはなかったが、初めから彼女を傷つけてしまっていた。
何もかもが違うのを忘れていた。
あまりに幸せな毎日で。
普通とは違う、コイツの見方や考え方。

「私には、繋心さんしか、いないから…」
可哀想に、随分と惨い檻に閉じ込めてしまった。
一方向しか見られない、狭くて小さい檻。
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