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迷い道クレシェンド【HQ】【裏】

第58章 まほろば


そういえば、怖くて一度も行ったことがなかった。
皆でいなくなるつもりだったのに、私だけ生き残ってしまったから。
私が、ころしたのに。
罪悪感で何回も、何十回も死のうとしたのに、勇気がなくて。
どんどん汚れて成長していく自分に耐えられなかった。
沢山の人が私を助けてくれた。
今なら、そう思える。


両親と言えるかわからない二人のお墓は、県内の山奥のお寺にある。
なんて言ったらいいかわからなくて、お花だけ添えた。
「もういいのか?」
「……うん」
帰ろう、と立ち上がると、会ったことのある女性が立っていた。
「あら」
「あ……」
事情聴取した婦警さんだったのをうっすら思い出す。
「あの時は、お世話になりました……」
「随分大人になったのね」
「……はい」
大人になってしまった、の間違いではないだろうか。

私は、本来なら、ここで一緒に眠るべきなのに、笑えることに、お花を添える立場になっている。
繋心さんに、生きなきゃいけないって言われたから、その覚悟を決めてしまったけれど、本当にこれでいいのかはわからない。

「なんで、私が捕まらなかったんですか?」
「…捕まる?」
婦警さんは、疑問にしてから大きな声で笑った。
「あー、こんなところで笑ったらダメよね!
でもおかしくて!」
「……はぁ…」
「なんでそんなこと聞くの?」
なんで、って、と一瞬考えてしまう。
逆に、あんな、中学生のしたことなんてすぐにバレてしまうはずなのに。
「私が、運転手の…あの人の飲み物に睡眠薬を入れたんですよ…?」
婦警さんは、呆然として、しばらく考える。
「……本当に?」
「はい」
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