第54章 【番外編】しづ心なく花の散るらむ
「つーわけで、こっちでしばらく過ごそうかと思ってんだけど」
天下のオフクロサマに相談すれば何か解決するのではないかと少し期待した。
「丁度いいもんをあげようと思ってたよ」
渡されたのは近くの温泉街の旅行1泊2日分のペア券だった。
「あー、旅行か」
しかしアイツに大浴場なんて、多分入ってもらえないだろう。
内風呂だけの温泉旅行というのも寂しい。
それでも家にいるよかマシか、と有り難く頂戴した。
帰り際に、母ちゃんは凄く真剣に見送りに来た。
なんだ?と振り替えると、肩を捕まれ、
「立派な初孫を期待してるよ…」
と低い声で言われる。
そんな、たかだか温泉旅行で大袈裟な…と鼻で笑ってしまった。
「新婚旅行まで待てよ」
とボケで返したが、ツッコミもなく、真剣さ通り越えて怖かった。