第54章 【番外編】しづ心なく花の散るらむ
出会いの季節が落ち着き、ゴールデンウィークに差し掛かる。
この時期、俺の敵は、どっと増える。
「お疲れ様でしたぁ」
「るるさん、今度ご飯でも!」
「ごめんなさい、私彼氏いるので…」
そのカレシの前で堂々と誘う野郎を目で追いながら、バイトが終わるのを待つ羽目になった。
「いえ、そういう意味じゃなくて、ご飯だけでもと…」
「怒られちゃうので…」
「るる、帰るぞ」
声を掛けて牽制を張ると、新入りはぎょっとした顔をした。
無防備で無警戒な恋人に、こういうのは尽きない。
そして、至らないことだらけの自分に自信はなく、風のように拐われる不安がたまにある。
今年のゴールデンウィークは長い。
休日振替もあり、上手くとれれば12連休くらいになるだろう。
「繋心さんは、今年も合宿ですか?」
「あー、最後の2泊3日だけな」
「そう、ですか……」
「一緒に行くか?」
「出来れば……」
なんだ、寂しいのか?といつものように胡座の上に軽い体重を乗せる。
腰に手を回すと、嬉しそうに見上げてくる。
「なんか、最近誰かに見られてる気がして……。
一人でいるの怖いんですよね…」
「お前がそういうこと言うの珍しいな?」
「うん…」
普段疎い奴が反応するということは、気のせいではないかもしれない。
このまま家に置いておくのも心配だし、連休開始までにどうするか考えることにした。