第53章 【番外編】深層心理
「ただいま…」
留守を見計らって帰ったが、残念ながら読みは外してるるは家にいた。
「お帰りなさいませ」
「………あぁ」
宇宙一可愛いと言ってもきっと過言ではない彼女は、むっと真顔で俺に挨拶してくる。
そこにいつもの甘えとか、いつものぶりっ子とか、全くなかった。
「怒ってる」
「怒ってません」
「……そ」
「ガッカリは、しています」
るるは、髪を耳にかけながら、拗ねたように言った。
その拗ねたように感じたのも、気のせいかもしれないくらい微妙なラインではあった。
「私、繋心さんのお店の棚卸しがあると知って、バイト先をお休みしていました。
相談してくれるかな、って」
「言ってくれれば…」
「言ってくれれば。よかったですか」
同時に同じ言葉を吐き出した。
薄々、そうしてくれると、ぼんやり期待はしていたが、本当にそうだったとは知らなかった。
こっちの店のことをいちいち彼女に話すのは、なんとなく、肩の荷の負担が過ぎると思って止めておいた。
あまり後継ぎの話をするのは、気持ちのいいものではないだろうと、勝手に思い込んでいた。
それは、自分自身がされて嫌だった経験を踏まえてだった。