第53章 【番外編】深層心理
作業はそんなこんなで難航し、夕方に近所の親父の注文が入り、レジうちながら変動していく在庫を確認しつつ、帳簿につけて計算して…なんてしていたら、深夜近くになってしまった。
帰る気力すらなくし、諦めてるるにメッセを送信する。
『悪い、実家に泊まる』
すぐに返信は来たが、飯がいるかどうかも言えなかったからか、居心地の悪いスマートな一言だった。
『お好きにどうぞ』
(怒ってる、よなあ……)
普段怒らない奴は、何故こうも怖いのか。
偉い学者さんやらは研究してくれていないのか、と途方に暮れる。
取り敢えず、今回の騒動で肝に銘じておくべきことが2つ出来た。
(女は雇わない、実家に最初から泊まる)
「それで?私の長期雇用はいつからぁ?」
「雇わねえよ」
「なんで!」
「なんでじゃねえよ、兎に角、人は足りてる。
困ってねえ」
「ねえ、本当に好きなんです。
別にカノジョと別れてまでとは言ってないじゃないですか」
コイツの真剣さに少し参る。
そこまでしてここにいたいのかと驚いた。
それでも、譲れない部分がある。
「今日だけの仕事だろ。次の場所探せ。
お疲れ様でした、サヨウナラ」
背を向けてヒラヒラと手を振る。
月がもう登りきった空の下で一服する。
さて、明日はなんて謝ろうか、と頭を抱えた。