第53章 【番外編】深層心理
棚卸しの日が来た。
るるに手伝いを頼もうとしたが、バイトの店も恐らくやるだろうと思った。
仕方なく、近所でアルバイト募集を掛け、男女一人ずつ雇った。
だが、案の定野郎はバックれ、女一人になる。
面倒なことになったのは、コイツがどっかで見た俺のファンだということらしく、長期で雇ってほしいと言われたあたりからだった。
「だから、これが終わっても雇わねえっつーの」
「もう!いいじゃないですかぁ!
最低賃金で構いませんからぁ!」
「そういう問題じゃねえ」
ぐいっと腕を引かれ、手を絡めてくる。
面倒な奴を雇ってしまったと、面接の杜撰さを憎む。
腕を振りほどこうとしたところで、見られたくない人物がいた。
「…………」
「…………」
「いらっしゃいませー」
「……あ、今日、学校じゃ、なかったんですね」
「そ、そうだ。
棚卸しで休み貰ってて…」
「そう」
るるの視線が限りなく痛い。
じっと掴まれている腕を見ているようだ。
「あ、あの、棚卸しの期間だけ、バイト雇ってて」
「やですぅ!永久雇用にしてくださいよぉ!」
「雇わねえっつーの!」
「永久……」
るるが何かの単語に引っ掛かったのか、ひっそりと呟いた。
冷や汗が止まらないこちらは、とにかくこの意味不明な女をどうにかしたくて精一杯だった。
「じゃあ、繋心さん、先に帰ってますね。
お疲れ様です」
いつもの語尾のハートが消え、ハッキリした句読点が目に浮かぶようだった。
「あの人、カノジョですかぁ?」
「ああ」
「怒ってましたけど、なんかしたんですかぁ?」
「お前が、聞くなよ…」