第6章 再出発とチョコ
玄関を開けると、土産を広げた両親が俺を見るなり、高い声でおかえりなどと言った。
「お袋さまよぉ、話があって……」
「なーによー改まっちゃって」
おばちゃん独特のイントネーションで手を扇ぎながら笑われた。
「あ、あの、すみません…」
るるがおずおずと入ると、部屋の空気が凍った。
予想はしていた。
女子高生とオッサン、並んだ図。
どう考えても最悪の結末。
「とうとう、欲求不満で犯罪を…?」
「だ…っ!もう……ちげえって……その……」
照れ臭くてつい歯切れが悪くなるが、それが余計に怪しまれていくのはよーくわかっている。
「その、カノジョだよ、カノジョ」
「ウソ」
「ウソじゃねーって…」
「ちょっとアンタ…!
繋心が女子高生に犯罪を…」
「してね……ねえよ…」
心のなかで一回、したわ……と呟いた俺がいた。
「驚かせてすみません、あの、私、家を追い出されてしまいまして。
数日こちらでお世話になっておりました。
それ以前に繋心さんにとても良くしていただいて、お付き合いを決心致しました。
ふつつかものですが…お許しいただけますか?」
出た、この余裕ぶり。
最後に妖艶に、ね?と俺に言ってくる。
ドキッとして、お、おう、とまた歯切れの悪い返事をしてしまう。
「まあまあこんな可愛い子がいたなんて!」
お袋も今のですっかり気に入ったようで、はあ、とため息が出る。
「それで?いつから付き合ってたの?」
「別にいいだろ…」
「3ヶ月ほど前です」
さらっと綺麗な顔で嘘吐くるるを二度見する。
誤魔化すように煙草に火をつける。
冷や汗がだらだらと流れた。
「やっだ、気づかなかったわ!」
「すみません、私がまだ学生の身分なので、内緒にしておりました」
「そう、じゃあまだ…」
「そうですね、健全なお付き合いをしております」
語尾にハートを付けて首を傾げてにっこりと両親に微笑んだ。
流石すぎる。
だがこっちは、灰を灰皿に落とす指が震え、脂汗が止まらない。
「ったく、んな話やめろよ高校生に…」
「あたしは息子が危ない橋を渡ってないか確認してるの!!
余計な口出すならさっさと出ていきなさい!」
「…くそ…」
聞こえないようにぼそっと悪態をついた。