第6章 再出発とチョコ
ブーイングを浴びた後、解散となった体育館を後にした。
1本ふかしてすぐに車に乗った。
そういや配達あったな、と中の荷物を確認して助手席に先に乗ってるるるに確認を取った。
「悪ぃ、配達あったから寄り道するぜ」
「ん、大丈夫です」
にっこりと頷くと、るるは鞄から小さなチョコを一つ食べた。
さっきまで乗り込んで奪い返すつもりでいた張本人がいる違和感と、昂ってなかなか戻らない感情、むしゃくしゃしながら頭を掴んで引き寄せる。
目を見開いて驚き、長い睫毛が自身の胸の中でぱちぱちと上下に揺れた。
「…心配したんだぞ」
「……ごめんなさい」
「お前のせいじゃねぇ」
「……」
ドクドクと鳴る心臓を聞かせるようにぎゅっと腕を回す。
「帰るおうち、またなくなりました…」
小さく弱音が聞こえた。
あのいつものわざとやってる余裕も隙も、全部生きるための虚勢だった。
ふとコイツの性格全てを理解できた。
飄々としてないと、壊れそうだったんだ。
「俺がお前の帰るところになってやる」
「…嬉しい」
細い腕が背中に回されるのが、これでもかっていうくらい幸せだった。
ちゅっと唇を奪うと、ビターなチョコの味がした。
配達を終えると、外は真っ暗だ。
海沿いを走ると、真っ暗な海にるるは夢中だった。
「今度は明るい時間に通ってやるよ」
「いえ、夜の海、すごいなって思って…」
波もほとんど見えない大きな真っ黒な水溜まりを、じっくりと見ている。
「怖くないのか?」
「ちょっと」
ゆったりと過ごす車内で、そんな他愛のない会話をし、俺は親になんて説明するかで頭をフル回転させていた。