第6章 再出発とチョコ
及川が去った後、部活どころじゃなかった。
大騒ぎだ。
るるの、必殺おねだりがなきゃそのまま警察行きだっただろう…。
今までの軽い経緯を説明し、るるから昨夜いきなり、及川に追い出された話を聞いた。
「徹さんがおじさまに何て言ったかわからないんですが、急に追い出されちゃって…。
でもその前に私の進路でおじさまに怒られちゃって…そのせいもあるかもしれません」
しゅん、と落ち込む痛々しいるる。
おじさま、は恐らく及川家の父だろう。
彼女は親戚の家に居候の身だと聞いていた。
整理しつつ、周りを見てみると、視線が痛い…。
「コーチ、こんな可愛い彼女出来てたのかよ…」
「絶対エンコー…」
「エンコーじゃねえって!!」
思わず怒鳴ってしまった。
広い天井のせいで、とんでもない単語が反響する。
「でもでも!どーするんですか!?」
日向が心配そうに俺とるる、交互に見ながら聞いてきた。
「繋心さんのお家、今日ご両親が帰宅するんですよね…?」
困ったなぁ、と呟きながら俺の返事を待つ。
いつもの演技か本物かわからない余裕そうな雰囲気をまとう。
にこっと困ったような笑みを浮かべ、
「またホームレス生活かな?」
とゆっくり言った。
「絶対ダメだ」
俺がそう言うのをわかってて言っているんだろう。
その妙な余裕が相変わらず腹立つ。
「バレー部全員の家に順番は!?」
「さんせー!」
「絶対に許さん!」