第50章 【番外編】世界中のショコラティエに謝れ
「あと手作りとかあっただろ」
「うーん、関わりたくなかったから、そこまで見てないんですよね…」
「手作りって、チョコに関しては、まずいんだよなぁ。
1回だけ貰ったが」
「誰にですか?」
「……言わねえよ」
もう、と少しモヤモヤする。
「あと、オマジナイとかいう魔術が流行ってな…」
「おマジナイ…なるほど…」
「チョコに自分の爪を混ぜると両思いになれるとか」
「……」
「髪とか」
「………」
「経血とか」
「!!?」
「因みにマジナイは漢字だと、呪いになる」
「徹さん、苦労してたんですね…」
岩泉くんと段ボールを持って帰っていた日を一瞬思い出す。
そして、手作りだけは廃棄し、既製品を私が貰っていた。
その図式が出来上がる。
「るるは、誰かにあげたことあんのか?」
「ううん、これが初めてですよ」
「……なんか、得したな」
「そうですか?」
「貰ったことはあるか?」
「あ、貰えたりもするんですか?
徹さんの在庫処分くらいですね」
「…じゃあ、これ」
高級そうな箱を手渡される。
男性にあげると想定されてシンプルに包まれた包装紙。
「…誰かに、貰ったんですか?」
少しショックを受ける。
断ってくれてもいいじゃない、と思ってしまう。
「や、俺が買った、るるに」
「ほんと…?」
「ほんと」
「嬉しい……初めてのチョコ、繋心さんで、嬉しいです」
紺色のリボンをほどくと、驚くほど簡単に箱が開いた。
ココアパウダーがまぶしてあり、生チョコレートかトリュフを彷彿とさせる見た目をしている。
「一つ、いただきますね」
「どーぞ」