第1章 夕日と肉まん
るるというらしい女は、丁寧な挨拶と自己紹介をすると案内した部屋に荷物を置いた。
頑なに名字は教えて貰えなかった。
警察に相談されるのを避けたかったのだろう。
「家の方はいいのか?」
一応内容に触れないよう聞いてみたが、一瞬怯えた表情を見せ、ゆっくりと頷いた。
逃げたくなるほどのことがあったのだろう。
何しろホームレスのような生活をしてまで逃げたのだ。
「風呂、沸かしたけど入るか?」
「!!ありがとうございますっ!」
さすがに若い女の子が長らく風呂に入れなかったのはつらいだろう、適当にタオルを用意してやり、その間に飯を作って待った。
可愛い女の子が家にいると考えるだけで、普段は面倒だと思えることも出来るもんだと我ながら情けなくなった。
少し経つと風呂場からか細い声がする。
「あの、すみません、お着替え……借りてもいいですか?」
持っているものは全て土汚れにまみれているらしく、せっかく清めた身体にまた纏わせるのは不快なのはわかる。
が、下着がこの家にあるはずもなく……。
「すまん、これしかなかった…」
「だ、大丈夫です!」
適当にそこらへんに干していた自分のシャツと短パンを渡し、彼女がゆっくり出てくるのを待った。
「明日、コンビニかなんかで見てこい。
そのくらいの金なら、まあ、やるから……」
あまりの申し訳なさに俺の声も小さくなっていく。
「…こ、こんなに良くしてもらってそこまでお世話には……!」
と言いかけて彼女は何かに躓いたのか俺に倒れてくる。
るるの身体は確かに軽いが、勢いのあまり支えきれず、俺も後ろに倒れていく。
薄い布1枚隔てて柔らかな膨らみが俺の胸に押し当てられる。
(最悪だ…)
最近そういうことが全くなかったが故に、あっという間に反応してしまった己。
この体勢でバレないわけがない。
「あー、あの、そういう気持ちはなくはなかったんだが、その、そういうつもりはなくて、これはもうサガというかなんというか…あー」
格好悪い言い訳をしどろもどろと続ける他にない。
「大丈夫ですよ」