第45章 【番外編】スイート&ビター1
本屋で久々に雑誌を数冊購入。
『オススメ厳選イルミネーション』
『恋人と行く隠れ名スポット』
『贈り物セレクション』
「………………」
(一気にめんどくさくなってきた…)
男なんて所詮こんな生き物だ。
1発試合が出来るなら、そりゃあ金も時間も使って、相手を喜ばせ、必死にもがきながらその一夜を獲得する。
だが、今現在同棲してる女はどうだ?
無料どころか向こうから誘ってくる。
こんな無駄なことして、何になる?
少しでも貯金して結婚費用に回した方がお互いのためではなかろうか?
よし、止めよう。
家で二人で過ごして、美味いケーキだけ予約して祝おう。
「繋心さん、お昼ご飯の焼きそば、塩とソースどっちがいいですか?」
脳内で浮かべていたるるが声をかけてくる。
可愛いエプロンをつけ、可愛い仕草で可愛い質問をしてくる。
毎日見ているのに、想像しているより幾分も可愛く思えるのは何故だろうか。
「………あんかけ」
「あ、それもいいですねぇ!おいしそう!
木耳残ってたかな…?」
台所に姿を消していくのを寝転がりながら見送る。
ふわっと、花の香りが届く。
こんなに良くしてもらっていて、こんな可愛い娘に、別に1発出来るかどうかだとか、金と時間の無駄だとか、そんなことを考えていた自分が浅ましくてイヤになる。
全力で喜ばせよう。
俺以外はありえねえって思わせる1日にしてやろうっ!
(ヤバい…プレゼントすら決まらない……)
あと2日。
相手のシフトは空いていた。
バッチリ決めると張り切ってかなり立つも、プレゼントも予定も決まらない。
今日が最後の休みだ。
(とりあえずケーキと晩飯の予約は出来たから、最悪夕方からでも……)
なんていう邪な考えすら浮かんでくる。
とりあえず、大型のショッピングモールにバイクを走らせ、片っ端から店を見始めた。
(化粧品、雑貨、本……)
「コーチ、す、すみません、お待たせしました…」
(最後の砦、東峰…)
「お前に掛かってる…頼んだぞ!!」
「は、は、はいっ!!」
思わずプレッシャーをかけすぎて、会って10秒で顔面蒼白する巨体をばしばしと叩いて、いざ出陣である。
エースというものはいつでもどこでも本当に頼りになる。
改めて実感しまくる。
(こんな場面でも役に立つのは予想外だがな)