第44章 【番外編】鵺
店を出た昼下がり、日頃の寝不足か、大欠伸が出る。
(ヤバ、疲れてる……)
「なんだ、眠いのか?」
休憩でたまたま来ていたたっつぁんに声を掛けられる。
昼飯に出てきた懐かしいにぎり飯をつまみながら、向こうが淡々と聞いてくる。
「もしかして、彼女?」
(なんでバレるかねぇ…)
頭をかいて、近くの少年誌を手に取る。
昔馴染みの漫画をパラパラとめくって、誤魔化そうと話題を変える。
「これ、まだ連載続いてんだなー」
「なあ、彼女だろ」
「……」
諦めて両手を挙げ、どこから話すか一瞬だけ考える。
「どーせマンネリとかいう贅沢な悩みだろ?
リア充爆発しろ」
的はずれな先手を打たれてますます頭を抱える。
問題点に掠りもしない言葉を黙って聞く。
「あー、それでいいっす……」
「勝ち組野郎め…」
捨て台詞を吐かれ、出入り口から何かを投げつけられる。
身構えてなかったので慌ててキャッチすると、なんとも見覚えのある小さな瓶だ。
「…いらねえよ」
小声で聞こえないように悪態をつくと、それを鞄の適当なとこに突っ込んだ。