第44章 【番外編】鵺
禁欲という言葉は、アイツにあるんだろうか。
ふとそんなこと思ったのは攻め立ててる真っ最中で。
三十路近くになると、体力面が段々とツラくなってくる。
射精に使う体力は、100メートルを全力疾走したそれと同等だと聞いたのは何年前か。
目の前の女が嫌いになったとかは決してない。
むしろ日に日にその魅力に浸かっていて、やがて干からびさせてくるサキュバスなのではないかとすら思う。
いくつゴムの封を切ったことだろうか。
独特のぬめりけで、手が油ぎってくる。
「るるさん、ご満足ですか…」
「んっ…」
身動ぎしながら、虚ろな目で見つめてくる。
「…はい…」
赤くなって優しく呟く。
そういう仕草は、正直、ズルい。
終わりの合図と言わんばかりに頬にちゅっと音を立ててキスされる。
(くっそ……)
「きゃっ」
起き上がろうとした白い身体をまた倒し、サイドボードに置いた避妊具にまた手を伸ばす。
「繋心さん…、まだ…?」
色っぽく嬉しそうに聞いてくる。
ほぼ毎日、こんな調子だ。