第42章 アップルアンドシナモン6
いつぶりかの新幹線に乗り、コーヒーを啜りながら窓を眺める。
そうだ、連絡をし忘れていた。
鞄からスマホを出して、通知が1件来ているのを見た。
「アイツ……」
開くと、よくわからない単語が羅列されている。
操作ミスかと思ったが、こんな長いタップミス、早々するだろうか?
返信するが、既読がつかない。
授業中だろうか。
なんとなく、イヤな予感がして、昨日の写真に写ってた野郎に試しにメールを送る。
『るるを見掛けたら連絡くれ』
都内の駅に着く頃に返事は来た。
『そういや見てない、探しとく』
東京に着いた連絡をコイツとるるにしておく。
相変わらず既読は付かない。
走って乗り換えを済まして、早くなんとか最寄りまで付かないかと祈る。
前回の反省を活かして、近くまで来たところでGPSで取得した彼女の居場所をスクショして送ると、見つけた、という報告のメールが届いた。
サプライズで来たのに、すっかり逆サプライズの状態だった。
案の定、タイミングは最悪だった。
会った時には既にるるは半分意識を失っていた。
木兎が運よく、未遂の状態で乱入できたのは救いだった。
「一発ずつ殴れたけど、あとは逃げられた…」
「そこはサツに任せるしかねーよ。
お前が退学になってもこっちの胸糞が悪い」
会える嬉しさを越える怒りと悲しみ。
こんなはずじゃなかったのに。
前髪を掬ってやると、くすぐったそうに身体を捩る。
「また守ってやれなかったな…」
駅前のビジネスホテルに入り、やっと会えた、と安堵する。
完全に無事とは言いがたかったが、バスタブに湯を張って、一緒に入って綺麗にしてやる。
全身についてしまったモノを洗ってやると、はあっと熱い吐息が漏れる。
髪も手入れしてやり、柔らかく設定したシャワーを頭から掛けると、睫毛を揺らしてゆっくり目を覚ました。
「………」
「るる…」
「け、しん、さ…」
震える声で名前を呼ばれる。