第40章 アップルアンドシナモン4
見知らぬ土地に友達もなく行くのは、慣れている。
でも過酷だった当時と違って、今は暖かい友達も恋人もいる。
そうなってくると、寂しさも一際大きくなる。
1人、初めての新幹線に乗って食べるサンドイッチは、いつもより味気なく感じた。
このまま3ヶ月、誰とも話せずに終わるのだろうか?
毎晩の繋心さんとの電話とチャットが唯一の楽しみになりそうだ。
と、思っていたけれど。
「…あ」
「あ!!!」
「お久し振りです、木兎さん」
「るる!!!」
私はどうやら、この人と姉妹校だったらしい。
くすくすと笑うと、看板を持って出迎えてくれた大きな身体を見上げる。
看板には大きく、学校の名前と、ようこそ!という文字が書かれていた。
「彼氏と別れたのか!?」
「ラブラブです、残念でした」
なんだ、と心底ガッカリしたように言われ、少しだけ申し訳ない気持ちになる。
都内の学校の近くにある寮へ案内され、それぞれの部屋に入る。
木兎さんは、寮から学校までの道と、近くの駅まで案内してくれるというので、私は後ろを歩いて景色を見ていた。
「すごいなー、人がたくさんいる…」
「ここは少ない方だぞ!」
「えー!?」
「あっちの繁華街で買い物が出来る。
最寄り駅はここ!
夜は変なの多いから、遅くなるようなら迎えに来てやる!!」
「ありがとうございます」
「同じ学年なんだから、敬語はやめてくれ!
くすぐったい!」
「そう、ありがとう」
近くのファーストフード店に入り、私はアイスティーをご馳走になった。
「毎日こんなところで暮らしてるんだー、すごいなー…」
「慣れたらいいところだ!!
るるもそのうち来るといい」
「え!?」
「俺はいつまでも待ってるから」
「……っ」
いつも真っ直ぐに言われるそういう言葉に私は慣れていない。
顔が少し火照るのがわかる。
「お前との一夜が、忘れられない。
お前にとっては遊びでも、俺には一生の思い出になった。
それは、覚えておいてくれ」
「…あの時は、ごめんね…。ありがとう…」
他にも言いたいことがたくさんあったけれど、私はその二言に全てを込めた。
あの時の醜くて死にそうな私を今でもありありと思い出せる。
濁ってどよめいた感情で、押し潰されそうだった。
「ちゃんと、仲直り出来たから」
「それは残念だ!!」
元気にそう言われて、思わずふふっと笑った。