第39章 【番外編】かたむいたてんびん
お店を出ると、新しく出来たファッションビルに案内してもらう。
「ここー!るるちゃんに似合うなって!」
連れていかれたのは3階にある新しい下着ブランドのお店だった。
フランス雑貨と植物をテーマにした愛らしい下着が揃えられていて、見ているだけでも楽しかった。
「わっ!かわいい…」
「でしょ?こういうのとかどう?」
透けたレースのベビードールは、天使みたいに可愛かった。
(背中も丸見えなのが…)
私のコンプレックスの話は誰にもしていない。
不審がられても困るし、やんわりと恥ずかしいと無難な答えを出して、他のを見ることにした。
「うーん」
「悩んでるのー?」
他の子が気にかけて声を掛けてくれる。
「や、こういうの着ても、どーせ脱がすし!って言われるのがオチかなって…」
「こういうのは自分のモチベーションの問題だよ!
可愛いの着てる私は可愛いって!」
そうか、とふと思った。
褒めて貰えることを優先しすぎて忘れていた。
私のモチベーション。
背中のことにいつも意識が行きすぎてて、いつも背中を隠すことしか考えてなかった。
それより、自分がいいと思ったものを…。
「買うっ!」
「そんな力まなくてもいいよ…」
他の子に見送ってもらいながら、いつものバスに乗ると、メッセージアプリからたくさんの通知がきた。
『写真よりカッコいい!!お幸せに!』
『まあまあじゃん』
『空気がノロケテタ…』
『そうなんです、カッコいいんです』と顔文字を付けて返信すると、ごちそーさま、と一言返ってきて、以降通知が止まった。
「楽しかったか?」
「うん、すっごく!」
二人席で繋心さんは優しく手を握ってくれた。
気持ちよく寄りかかっていると、あっという間に着く。