第38章 【番外編】言わないと伝わらないこともあります
隣の自分より低い身長が気になる。
目を離すとすぐ違うものを見ているし、すぐいなくなるし、そわそわして落ち着かない。
怪我でもしたら烏養さんに殺されるのは間違いなく、俺。
「菅原くん!あれ見て!かわいい!」
「待ってっ、て…」
結構高いヒールを履いているにも関わらず、るるさんは俊敏に次から次へと何かを見つけては寄っていく。
漸く本屋にたどり着く頃には、何故か俺の方が疲れていた。
「選んでる間、つまんないと思うから、違うとこ見てていいよ」
「え!どんなの選ぶのか見たい!」
「え!?じゃ、じゃあ……」
何故かその時に限ってはくっつくんじゃないかというくらい近くにいて、
(胸、あたりそ…)
全く集中出来なかった。
(すっごい、いいにおい…)
ふわっと揺れる髪からいつもの華やかな匂いがする。
耳に揺れるガラスのようなキラキラしたイヤリングが可愛らしく、また彼女を引き立てた。
耳元に付いた赤い印が、相変わらず二人の仲の良さを教えてくれるようで、幸せな気分と切ない気持ち、いっぺんに混ざってはじんわりと胸にしみた。
最初の方は意識がほとんど持っていかれてたが、やっと慣れて、無事1冊を選ぶことが出来た。
「ありがとう、待たせてごめんね」
「ううん、参考になってこちらこそです」
「まだ時間あるなら、るるさんの買い物も付き合うよ」
「ほんと!?嬉しいなぁ」
キラキラと嬉しそうに笑うのが、こちらもとてつもなく嬉しくなる。