第37章 【番外編】ゆうべはおたのしみでしたね
「え!?私なんかでいいんですか!?」
「ダメだ、ダメ絶対!」
「コーチが勝てばいいだけの話っすよね」
この腹黒貴公子…。
照りつける太陽の下、爽やかな笑顔からくるあの楽しそうな腹黒い笑いは俺にしか見えない。
「コーチ!ハンデで目隠しでグルグル!」
「はあ!?」
更に追い討ちをかけられる。
順番にやる中、誰一人割ることが出来ず、灼熱に佇むスイカ。
冷やし直した方がいいのではないかとすら思えてくる。
最後に回ってきたボールに全神経を集中させる。
やってやる…。
コントロールと筋力をなんとか整え、打った。
手応えはバッチリ…!
瓜科独特の詰まった身が、ばしゃーっとはじける音がする。
「うっしゃぁぁ!!見たかっ!!」
「…だから、大人げないって」
るるがスイカを皿に上げて、ささっと冷やした海水をかける。
他のマネと大きさを整えて盛り付けてくれた。
「はい、あーん」
いつもよりも甘えた声でスイカが差し出される。
(………しまった………。
人にやられるのが悔しくて勝ったけど、これはこれで羞恥プレイだ…)
「どうしたんですかぁ?」
「いい、自分で食う…」
「ダメです、あーーーん」
フォークに刺さったものを頬張り、塩っぽく甘いものが口に入る。
その様子を嬉しそうに澤村に見られる。
アイツ、全部計算してやがった……。
「はい、種出しましょーねー」
「そん、くらいやる、から…」
「はいはい、ぺ、しようねぇ」
ティッシュをぐいぐい口に当てられる。
「残念だったな、スガ」
「割れなくて、よかったかも…」
二人の切ない会話に頷きたくなった。