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迷い道クレシェンド【HQ】【裏】

第37章 【番外編】ゆうべはおたのしみでしたね


朝、アイツは何一つ覚えていなかった。
「昨夜は激しい一夜で」
と皮肉をこめて言ったのに、
「え!!?し、しちゃいました!!?
私声大丈夫でした!!?」
と大声で驚いていた。
「今の声も抑えろよ!」
「あ、ごめんなさい……。
私、繋心さんにジャージ借りた所までしか覚えてないんですけど、そのあと、なんかありました?」
「……なんにもない」
「なんにもない…」
「じょーだん」
「じょーだん………」
るるは少し残念そうな顔をすると、くすくすと微笑む。
「よかった、覚えてないなんて、勿体無いことなくて」
「…………だな」
なんて可愛いこと言ってくれんだ…と爆発しそうなのを抑えてぎゅっと拳を握る。

最終日は、羽目を外そうと練習は午前のみにして、午後からは海水浴だった。
夏休み唯一の思い出になる奴もいるだろう。
が。
(視線やっば…)
ちょこちょこ熱視線を送られて思わず戸惑う。
(いや、我慢してんのはこっちなんだっつーの…!)
なるべく見ないように背中を向けて誤魔化す。
身体は細いくせにしっかりとある胸は、動く度に溢れそうだ。
つなぎの水着に背中の傷を隠すためにパーカーを羽織ってるが、昨夜のことを思い出させて、逆に目の毒だ。
向こうも誤魔化そうとしたのか、菅原と澤村と話してるようだった。
それはそれで、ムカつく……。
気持ちがどうにもできないもどかしさが、しばらく渦を巻く。
さりげなく近付き、なんの話をしているのか聞き耳を立てる。
「…でね、どうしたらいいかな?」
「なんの相談してんだよ」
澤村が振り返ってニヤニヤとイヤな笑みを浮かべてくる。
大人げない、と聞こえないように言ってくる。
(わかってる、つーの)
心底念じて睨みつける。
「スイカ貰ったので、スイカ割りしよっかって話してたんです」
「せっかくだからサーブでやろうかって」
急に追加されたルールに思わず熱が上がる。
「よっしゃ、やったろ!」
「全員、整列!」
簡単に説明すると、順番に打ち始める。
「割れた人にはなんかあるんすかー!?」
まさかの賞品をつけろというクレームが入る。
「じゃあ、るるさんがスイカを食べさせてくれるぞ」
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