第36章 【番外編】眠り姫の褒美
「…お、おはよ…」
「……あれ?寝ちゃってた?」
「うん、風邪、引くよ」
何事もなかったかのように振る舞う。
「ごめんね、ありがとう」
うーん、と伸びをしながらるるさんは立ち上がった。
ふわっと柔らかないつもの香りがする。
(ああ、香水じゃなくて、彼女の香りなんだ…)
なんて思うと、湯冷めした身体が火照ってくる。
彼女は何歩か動いて、くるっと振り返る。
「菅原くんの、ハジメテ、奪っちゃった」
語尾にハートを付けられて、少し恥ずかしそうに言う。
「みんなには、内緒だよ!
だから、もう、ダメ…ね?」
首を傾げ、少しだけ困った表情をされる。
両手の人差し指でバツ印を描く。
「じゃあね、また明日!」
遠く廊下に消えてく後ろ姿を見つめて、見えなくなったところで壁に頭を打ち付けた。
「あー!!もうー!!」
何やってんだろう。
すごく困らせてしまった。
こんなことしたかったわけじゃないのに…。
やっと額にじんじんと痛みが伝わったところで、静まっている大部屋にひっそりと戻った。