第36章 【番外編】眠り姫の褒美
合宿も最終日になった。
皆で散々騒いで、あとは消灯のみに差し掛かった時、大浴場の前のベンチにるるさんの姿が見えた。
まだ髪が濡れているのを見ると、出たばかりのようだった。
「……るるさん、どう…」
どうしたの、と声を掛けようと近付いて、眠っていることにはたと気付いた。
くー、と静かな寝息が聞こえる。
毎日朝早く起きて3食作って、影ながらに俺らを支えてくれた小さな身体。
近付いてわかる、胸元が大きく開いた部屋着から覗く可愛らしいレース、と、首に残る真っ赤な痕。
扇情的で背徳的なその光景が目に焼き付く。
(やっちゃったなぁ…)
吸い込まれるように唇を奪ってしまった。
そんなことを思ったのはもう大分時間が経ってからだった。
あんな見せつけられるようなところを見せてくるほうが悪い。
そんな、どす黒い考えが渦巻く。
「んっ、ふ……」
息苦しそうに彼女が悶える。
未熟すぎるその技術ではどうにもしてあげることができない。
ただ、ただ、本能の赴くまま。
あの人だったら、こんな無様なモノじゃないんだろうか。
もっと、優しく出来るんだろうか。
自分がイヤになる。
何もかも、敵わない。
「んんっ…!」
くぐもった色っぽい声が正気にさせる。
続きが聞きたいのに、慌てて離した。
ベタだけど、お互いの銀糸が切れるのが見えるのが、背筋をぞくっとさせる。
身動ぎして、人形のように彼女は瞬きをして目を覚ました。