第36章 【番外編】眠り姫の褒美
あの倉庫での出来事以来、久々にるるさんに会った。
長い夏期合宿も一緒になるとは思わず、驚きと困惑が半端ない。
(前より可愛くなった…?色っぽくなった…?)
見ていない隙にちょこちょこ目で追ってしまう。
相変わらずの細い手足と、白い肌が印象的だ。
高校時代にあった演技みたいな余裕は今はなく、よく照れたり、困ったりする顔を見るようになった、と思う。
「諦めてないじゃん」
「や、さすがに諦めてはいんだけど…」
大地にばしばしと背中を叩かれて笑われる。
俺だって忘れられるならそうしたい。
あの日のことを思い出すと、あまりの恥ずかしさに顔が熱くなる。
なるべく思い出さないようにしていても、ついふとした瞬間に、ねっとりとした濃厚な短い時間が頭を過る。
「はぁー、情けなー…」
「まあでも、気持ちは言えたんだろ」
「スッキリはした、かな」
室内にこもる熱気に、スポドリがゆっくり身体にしみこむ。
あの日の気持ちも、ゆっくりといつかはしみこんで消えていくんだろうか。
「菅原くんもどーぞ」
「…っ!!」
「ごめんね、驚かせちゃった?」
「いや、ごめん!違うこと考えてて…っ!」
「アイスどーぞ」
「あ、ありがとう…」
渡された棒アイスを受け取る。
どういたしまして、と甘く言われる。
動揺を隠せなくて、わたわたとしてるうちに受け取ったものを足に落とした。
幸い包みのままだったからよいものの、横にいた大地には大笑いをされる。
「…情けなー……」