第35章 【番外編】ミルキーウェイで逢いましょう
午後過ぎの到着、私はすぐに食材を準備しないと間に合わない時間だった。
人数が増えたバレー部はすごく賑やかで、その分少しだけ負担が増えた。
でも強豪になったんだって嬉しそうに笑ってる皆は、すごく眩しくて、私も嬉しくなった。
夕飯が終わり、お風呂も終わって、私も漸く自由時間に入った。
「あーつかれたあー」
なんだかんだバスで言われつつも、繋心さんと同じ部屋にしてもらっていて、先生の親切さに心から両手を合わせた。
(でも谷地さんみたいな可愛い子と同じ部屋も憧れたなぁ…)
などとしみじみと思ったりもした。
「おつかれ」
「繋心さんも」
冷蔵庫からノンアルコールビールを取り出して開けるのを横目で見ながら荷物の整理をする。
窓を開けると、海の音がする。
古い民宿だけれどとても海に似合ってて落ち着く。
「満月だし行ってみるか?海」
「行きたいです!」
と立ち上がろうとして荷物を確認する。
「なんだ?」
「着替えるので外で待っててください」
「はいよ、ついでに一服してくる」
慌てて支度して、持ってきた真っ白なサンダルを玄関に置いた。
新品だから、履き心地は慣れない。
いつもより少し高いヒールは、少しだけ彼の顔が近くなる。
「お待たせしました」
「…!」
繋心さんは、いつもより少し吃驚して、そのまま黙ってしまった。
「あれ?変ですか?」
タグ外したかな?と不安になってくるっと回る。
おじさまがくれたワンピースは、夜なのに灯りに当たるとキラキラと光が反射して綺麗だった。
全円を細かくギャザーを寄せてあるスカートは、回るとよく広がった。
一周遅れで身体にひらひらと追い付く裾を見て、高いものを貰ってしまったなぁと少し反省する。
「わぁ!凄いですね!
私も初めて着たんですけど、身の丈に合わなかったかも…」
相変わらず固まってる繋心さんを見て言った。
馬子にも衣装、くらいには思ってくれないかな…と切なくなる。
「いや、すごい、似合ってる……」
「ほんと?」
「ほ、ほんと…」
「よかった。ね、行きましょう?」
いつもみたいに手を引くのに少しぎこちない。
「転びそうになったらちゃんと支えてくださいね?」
他人行儀なのが悔しくて、無理やり腰に手を回させる。
「お、おう…」
「もー!」
服一つでここまで緊張してしまう繋心さんが可愛く思えてきゅんとする。