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迷い道クレシェンド【HQ】【裏】

第34章 アップルアンドシナモン3


「お世話になりました」
「お大事にどうぞ」
熱がすっかり引いた私は、すぐに退院させてもらえた。
いつもの車が迎えに来ると、それに乗って家に帰る。
本当は帰るのが凄く怖かった。
それがわかってか、何も言わずに膝に手が置かれる。
煙草の煙すら懐かしくて、泣きそうになる。
「好きです…」
「知ってる…」
見知ったやり取りで返ってくる言葉が心地いい。
あの一晩は終わったのだと、私の中で誰かが言ってて少しだけ安心する。
でも。
それでも、家の前には彼女がいた。
「だいじょーぶ?」
凄く技とらしく聞こえる。
私に敵意があるせいだ。
穢い私が醜くなる。
あの日、私が逃げ出したのは、それだった。
こんな姿を好きな人に見せたくなかった。
だから逃げた。
怖かった。
「……っ」
きゅっと手を握って俯く。
また、また醜くなる。
我慢しなきゃ……。
「お前とは終わったんだ、もう来るなっつっただろ?
次に来たらサツにまかせるとも」
「待って!だって私、諦め切れな…」
彼女が言い掛けているのに、繋心さんは、いつもみたいにまるでぶれないで、私に口づけた。
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