第34章 アップルアンドシナモン3
私から生きる希望だった人を裏切ってしまったのに、合わせる顔すらない。
「本当はダメなんだけどね」
看護婦さんがポケットから何かを出してくれた。
携帯の充電器だった。
「あげるから、好きに使って」
「…はい…」
「凄く心配してたから、連絡してあげたら?」
「…!」
各所の緊急連絡先を、繋心さんにしていたのをふと思い出した。
繋げて電源を入れると、凄い数の連絡が来ていた。
「……」
「どうしたの?」
「でも、私、裏切っちゃった…会えない……」
俯くと、引き戸が開いた。
「うっせーな、裏切ったとかなんだとか、関係ねーよ」
会いたくて、会いたくなかった人…。
「散々探させやがって…」
呆然としてると、その慣れ親しんだ身体に包まれる。
「やっと見つけた…!」
「…ごめんなさい……」
「明日には退院出来るから」
看護婦さんの声が聞こえて、繋心さんは、ぱっと私を放す。
「……す」
ごゆっくり、と笑って彼女は出ていった。